健康保険・厚生年金・雇用保険って何?知っておきたい「労働保険・社会保険」の知識

  • 2021年1月28日
  • 2024年4月12日

求人票の加入保険等の部分には、「雇用・労災・公災・健康・厚生・・・」と各種保険制度の略称が記載されています。

労働保険・社会保険という言葉は聞いたことがあったり、給与から保険料が天引きされていたりするけれども制度内容は知らないという方もいらっしゃるかもしれません。ここで労働保険・社会保険について知り、会社選びの基準に加えてみましょう。

労働保険・社会保険とはどんなもの?

労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」という二つの保険制度の総称です。

二つの保険制度の共通点は、労働者や労働者であった方、労働者になろうとする方を保護・支援する点です。社会保険とは、一般的に「健康保険」と「公的年金」の二つの制度を称して言われることが多いです。公的年金は、更に「国民年金」と「厚生年金保険」に分けられます。国内居住20歳以上60歳未満の全ての人が対象となる国民年金に対し、厚生年金保険は対象となる事業所で働き、かつ、加入条件にあてはまる労働者が加入出来る年金保険制度です。

労災保険・雇用保険はどんなもの?

労災保険は、業務上の事由や通勤によって負傷、死亡した際に被災した労働者や遺族に対して保険給付を行います。

例えば社内の階段で転倒し足を挫いて診療にかかったときなど、自己負担0円で治療が受けられます。労災保険は対象者の範囲が広いですが、代表権を持つ法人の役員や事業主と同居している親族は原則、対象となりません。

雇用保険は、失業者への給付や、介護・育児休業している労働者、就業促進・定着のため教育訓練を行う方へ給付を行います。

雇用保険は、一般的な労働者なら全てが対象となる労災保険と異なり、加入対象になる労働者とならない労働者がいます。加入労働者である間は、雇用保険料が給与から天引きされますが、被保険者期間によって雇用保険の給付を受けることが出来ます。

健康保険はどんなもの?

健康保険には、市町村が運営する「国民健康保険」と全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」、そして業種や企業等によって構成される「健康保険組合」があります。

雇用されている労働者は、就業条件によって、事業所が加入している協会けんぽや健康保険組合の被保険者となります。健康保険はどれか一つに加入していれば良いので、国民健康保険の加入者が就職し協会けんぽの被保険者となれば国民健康保険の加入者ではなくなり、国民健康保険料を納めなくてよい代わりに、協会けんぽの健康保険料を納めることとなります。

また、40歳以上になると介護保険料も納めます。健康保険の給付は、診療を受けた際の自己負担の軽減だけではなく、病気休業中の手当金や介護に関するサービスなど多岐に亘ります。

厚生年金保険はどういうもの?国民年金とは違うの?

厚生年金保険と国民年金は2階建て構造の公的年金制度と言われます。

1階は一律の国民年金保険料を納める国民年金で、2階は報酬(給与・賞与)額に厚生年金保険料率を乗じた保険料を納める厚生年金保険です。厚生年金保険に加入している方は、厚生年金保険料を納めることにより、国民年金と厚生年金保険の保険料を納付していることとなります。二つの大きな違いは保険料と受給する年金額です。国民年金は保険料が一律(令和2年は月額16,540円)で、上限である40年、480月分納めると満額の年額781,700円が受け取れます(2020年現在)。

厚生年金は保険料が給与や賞与といった報酬額に応じて計算され、受け取れる年金額も過去の報酬額と加入月数を元に決定されます。老後に受け取れる年金の他にも、障害が残った際の障害年金や、加入者が亡くなった際の遺族年金がありますが、こちらも国民年金部分は一定額で厚生年金保険部分は過去の報酬額と加入月数によって決定されます。

社会保険は入らなきゃいけないの?

65歳以上で構成される高齢者世帯のうち、51.1%の世帯が公的年金のみで生活しています 。生活が困難な状況になった場合に皆で支えあう仕組みの社会保障で、対象者は加入が義務付けられています。健康保険や厚生年金保険は、適用事業所に勤める学生以外の方で、週に20時間以上働いていたり雇用期間が1年以上になることが見込まれる方、賃金の月額が8.8万円以上だったりといった条件に当てはまる方は被保険者となります。

厚生年金保険料率は18.3%で東京の協会けんぽの保険料率は9.98%(介護保険対象者は11.58%)なので、事業主と折半でも給与の20%弱が社会保険料として天引きされているのを見ると加入したくないという場合もあるかもしれません(保険料率は令和6年4月現在)。ですが保険料は事業主と折半、天引きされた保険料は全額所得控除となり、老齢・障害・死亡した際の遺族までをカバーし、生活が苦しい場合は免除制度もある年金制度は労働者にとって非常に有利な仕組みです。

保険料はどうやって納めるの?

労災保険料は、事業主が負担するので労働者が負担することはありません。雇用保険料は業種によって雇用保険料率が異なりますが、労働者が一部を負担し残りを事業主が負担します(労働者の負担は建設業など一部の業種を除き、原則0.6%となっています 令和6年4月現在)

健康保険料(介護保険料含む)と厚生年金保険料も被保険者と事業主で折半して納めます。労働者・被保険者が負担する保険料は給与・賞与から天引きされ、事業主が納付を行ってくれるので労働者・被保険者が個人で労働局や年金事務所に納める必要はありません。ただ、離職した後などは個人で国民健康保険や国民年金の保険料を納める必要が出てくるので、離職後すぐに社会保険制度のある事業所で働くことが決定していない方は、早めに市区町村の窓口に届け出た方が良いでしょう。

まとめ

事業所で働いていると、知らず知らずのうちに各種保険制度の恩恵を受けていることがあります。公的年金の保険料は、学生や生活が困窮した場合等に免除となる制度もあります。ぜひ、就業の場を選択する際に社会保険のことを思い出してみてください。

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この記事を書いた人

岡 佳伸

岡 佳伸

社会保険労務士法人岡 佳伸事務所代表 アパレルメーカー、グッドウィル、KYBなどでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、埼玉労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。

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